研究紹介
包括病態病理部門での研究の特徴
◆主に、患者の病巣から検査や手術で得られた組織・細胞検体や病理解剖によって得られた組織(臨床検体)を始点(基盤)および終点(実証)として研究を進めています。
1)臨床病理学的研究:各種病変において病理学的視点で捉えた所見(組織細胞形態,各種バイオマーカー発現など)の臨床的意義を追求します。
2)腫瘍の発育進展過程の研究:多くの悪性腫瘍では、その前駆病変、早期病変が顕微鏡下には捉えられます。このミクロレベルの前駆病変から臨床的な“がん”に発育進展する過程について、病理組織形態の変化を基盤に、遺伝子発現異常、蛋白発現異常、遺伝子メチル化異常、遺伝子異常の解析などを行い、その多段階的発育進展過程の解明を目指します。
3)腫瘍間質・微小環境に関する研究:腫瘍は腫瘍細胞の性質だけでなく、周囲の微小環境と相互作用しながら発育進展していきます。微小環境には、がん関連線維芽細胞や免疫細胞、血管成分などが複雑に関与しており、主にがん関連線維芽細胞(CAF)に関する研究を進めています。
4)3次元病理を用いた研究:組織透明化技術による3次元病理は、今後、病変の3次元的評価、分子異常の3次元的分布の理解など病理学の新たな展開にもつながる可能性があります。また最新の光学系機器の導入、AIによる解析などで、病理組織検体を薄切によって二次元化することなしに解析する新たな病理診断法の開発も進めています。
5)疾患概念の整理・確立への貢献:病理学は、病変の疾患概念の整理や確立にも重要な役割を果たしており、当研究室では、多くの国内外の多施設共同研究や国際コンセンサス構築にも積極的に参画しています。
病変はどの様に生じていくのか
病理学は,その病変による組織,細胞形態の変化を捉えることによって,その病態を考え,またその病変に名称(病変名,疾患名)を与えて来ました。その様な組織,細胞レベルの変化を,対象病変の初期から経時的に捉え,さらにそこで変化している分子の異常とも総合して考えることで,病気がどの様に進展していくのかの理解が可能になります。そしてこのような知見はその病気の新たな診断法や治療法の基礎データとなります。
症例からの学びを大切にする
病理学の研究の基本は、「症例にあり、最終的にも症例に戻る」と言えます。
一例一例の症例を詳細に研究することは、その病患の疾患状態や特徴を深く理解することにつながり、新たな病因や疾患のメカニズムに関する洞察も得られます。症例を大切にすることは、臨床家との連携を強化することにもつながります。
最新の研究・技術へのアクセスと積極的導入
病理学は、古い学問である一方、ざまざまなニーズにも合わせて常に進化している分野でもあります。組織標本に見られる形態変化のある部分だけを採取して,その分子異常を検索することにより,形態変化と分子レベルの変化を対応させて考察することが可能になります。また,組織を透明化すると病変の3次元像を見ることもできる様になりました。人工知能は,病理学分野でも、病理診断精度の向上、個別化医療への寄与、医師の負担軽減、蓄積データの活用などさまざまな可能性を有しています。この様な新たな技術を積極的に導入しながら病理学的研究を進めていきます。
病理学でワクワクしたい人募集!
組織・細胞の二次元解析、三次元解析から遺伝子解析まで、病理学の幅広い領域をカバーする研究を行っていきます。それぞれの興味のある分野で、一緒に病理学の面白さを深めませんか?博士課程を希望される方もぜひご連絡ください。